『終わらざる夏』
『終わらざる夏』(浅田次郎、集英社、2010年)を読みました。太平洋戦争末期、敗戦が濃厚の中、降伏後の通訳という極秘の任務でクリル諸島最北の占守島(しゅむしゅとう)に向かった兵士とその家族を中心に、戦争の悲惨さを描いた小説です。一人一人の生活を破壊して、そしてその人の精神も壊す戦争というものの恐ろしさを描くだけでなく、日本の降伏後に占守島への攻撃を命じられたソ連兵の苦悩も描き、戦争に勝者も敗者もなく、そこには国家によって使い捨てられる国民一人一人がいるのみ、という点が主張されています。
国家が先にあって国民が後にあるようなことは本末転倒である、この当たり前の事実は戦争とは特にないがしろにされる、このことを改めて教えてくれた小説でした。名作です。
by kota714
| 2017-03-27 22:39
| 本
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